松下年金事件では、年金の減額(給付利率の引き下げ)の規定には、合理性があるという判断がなされました。
では、実際に引き下げを実施することについてはどうなのでしょうか?
この点について、大阪高裁は、次のように述べています。
①同社は業績低迷の打開策として「キャッシュバランスプラン」を導入、当面の給付利率を3.5%としており、現役社員が将来受け取る年金と、OBが現在受けている年金との間に大きな格差が生じている。
②同社は既に、従業員、取引先へのコストダウン施策への協力要請、株主への配当減少を実施しており、これらの犠牲のもとに、OBへの年金給付率を維持しているような状況になっている。
③引き下げ後の給付利率でも、当時の金融市場の利率を大きく上回っている。
④同社は説明会などを通じて年金受給者に、利率引き下げの経緯を説明して理解を求め、94.6%の同意を得た。
以上から、給付率引き下げ(給付減額)を有効と判定しています。
つまり、①制度改定(給付減額)の内容の相当性、②制度改定の必要性、つまり会社の経営状況(の悪化)、③手続き(十分な説明、同意)の3つがポイントになるわけです。
ちなみに、確定給付企業年金法施行規則では、給付減額する場合の要件を、次のように定めています。
(もうひとつの代表的な企業年金である「確定拠出企業年金」(いわゆる「日本型401k」)は、運用実績によって給付額が変動する仕組みのため、「給付減額」という概念がそもそもありません)
(給付減額の理由)
第五条 令第四条第二号 の厚生労働省令で定める理由は、次のとおりとする。ただし、加入者である受給権者(給付を受ける権利(以下「受給権」という。)を有する者をいう。以下同じ。)及び加入者であった者(以下「受給権者等」という。)の給付(加入者である受給権者にあっては、当該受給権に係る給付に限る。)の額を減額する場合にあっては、第二号及び第三号に掲げる理由とする。
一 確定給付企業年金を実施する厚生年金適用事業所(以下「実施事業所」という。)において労働協約等が変更され、その変更に基づき給付の設計の見直しを行う必要があること。
二 実施事業所の経営の状況が悪化したことにより、給付の額を減額することがやむを得ないこと。
三 給付の額を減額しなければ、掛金の額が大幅に上昇し、事業主が掛金を拠出することが困難になると見込まれるため、給付の額を減額することがやむを得ないこと。
(以下略)
(給付減額の手続)
第六条 令第四条第二号 の厚生労働省令で定める手続は、次のとおりとする。
一 規約の変更についての次の同意を得ること。
イ 加入者(給付の額の減額に係る受給権者を除く。以下この号及び次項において同じ。)の三分の一以上で組織する労働組合があるときは、当該労働組合の同意
ロ 加入者の三分の二以上の同意(ただし、加入者の三分の二以上で組織する労働組合があるときは、当該労働組合の同意をもって、これに代えることができる。)
二 受給権者等の給付の額を減額する場合にあっては、次に掲げる手続を経ること。
イ 給付の額の減額について、受給権者等の三分の二以上の同意を得ること。
ロ 受給権者等のうち希望する者に対し、給付の額の減額に係る規約の変更が効力を有することとなる日を法第六十条第三項 に規定する事業年度の末日とみなし、かつ、当該規約の変更による給付の額の減額がないものとして同項 の規定に基づき算定した当該受給権者等に係る最低積立基準額を一時金として支給することその他の当該最低積立基準額が確保される措置を講じていること。
2 給付の額が減額されることとなる加入者が加入者の一部に限られる場合にあっては、前項第一号イ及びロの規定中「加入者」とあるのは、「給付の額が減額されることとなる加入者」とする。
3 給付の額が減額されることとなる受給権者等が受給権者等の一部に限られる場合にあっては、第一項第二号イ及びロの規定中「受給権者等」とあるのは、「給付の額が減額されることとなる受給権者等」とする。
4 第一項第一号の場合において、実施事業所が二以上であるときは、同号の同意は、各実施事業所について得なければならない。
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