2009年3月24日 (火)

マクドナルド店長訴訟は和解

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◆世間の注目を集めたマクドナルド店長訴訟

昨年の1月、東京地方裁判所が出した判決は、大きな波紋を呼びました。いわゆる「マクドナルド店長訴訟」です。
この事件は、日本マクドナルドが店長を管理監督者と位置づけ、残業代を支払わないのは、権限や処遇の実態からみて違法であるとして、同社店長が未払い残業代の支払を求めていたものです。
判決は、職務・権限および勤務の実態と賃金などの処遇の2つの要素から、管理監督者にあたらないと判断、会社に総額約750万円の支払いを命じました。

判決が示した判断基準は、次の通りです。

・企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、労働基準法所定の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないといえるような重要な職務と権限を付与されている。
・賃金等の待遇やその勤務態様において、他の一般労働者と比べて優遇措置が取られているので、労働時間等に関する規定の適用を除外されても、当該労働者の保護に欠けるところがない。

そして同社の店長が、これらの要件から見て管理監督者といえるのかを、次のように判じています。

①店長の権限

「店長は店舗の責任者として、アルバイト従業員の採用や、従業員の勤務シフトの決定等の権限を行使し、会社の方針に即して店舗運営をする立場から、店舗運営においては重要な職責を負うものの、その職務や権限は店舗内の事項に限られる。」と判断しました。
では、「職務や権限は店舗内の事項に限られる」場合、その人は管理監督者にふさわしい権限があると言えるのでしょうか?
裁判所は、「企業経営上の必要から、経営者と一体的な立場で、労働時間規制の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないといえるような重要な職務と権限を付与されているとは認められない。」と判断、管理監督者の要件を満たしていないとしたのです。

②店長の勤務実態
ここでポイントになるのは、「制度的にどうなっているか」ではなく、「実態がどうなっているか」、です。

判決は原告が次のような実態にあり、労働時間に関する自由裁量性があったとは言えないとしています。
長時間労働を余儀なくされる
・店長固有の業務
・店舗の各営業時間帯には必ずシフトマネージャーを置かなくてはならず、シフトマネージャーがいなければ、その役割を店長が果たす

③店長に対する処遇
裁判所は、店長の年収と、そのひとつ下のポジションになるファーストアシスタントマネージャーの平均年収を比較し、「店長の賃金は、管理監督者に対する処遇として十分とはいい難い。」と判断しました。


◆和解成立、会社は一審判決を受け入れ

この裁判は、東京高裁に舞台を移して争われていましたが、去る3月18日、和解が成立しました。
3月19日の日経新聞によると、会社は原告勝訴の一審判決を事実上受け入れて高野さんが管理職に該当しないことを認め、約1000万円の和解金を支払うということです。

また、和解条項で高野さんが労働基準法の定める管理職に該当しないことを確認したいうことです。

このように、この訴訟は一応の決着を見ました。
しかし、この問題がすべて一件落着したわけではありません。
今回の裁判やこれまで行政当局から示されている管理監督者の判断基準をよく確認し、自社の管理職の処遇が問題ないか、しっかり確認しましょう。


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2009年3月12日 (木)

名ばかり管理職訴訟~原告のSEが勝訴

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◆流通、外食産業で火がついた「名ばかり管理職問題」ですが

昨年、大きな問題になった「名ばかり管理職」。
中心は他店舗展開する流通・外食産業が中心でした。

しかし、この問題は、当然のことながら、これらに限定した話ではありません。

◆SEが訴えを提起

去る3月9日、東京地裁は、ソフトウエア開発会社社員の男性システムエンジニア3人が、権限のない「名ばかり管理職」扱いされ残業代を受け取れなかったとして、未払い残業代の一部など約1億円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は9日、約4,500万円の支払いを会社に命じました。

原告は課長代理に任命され管理職扱いされていました。(ただ、2008年11月、管理監督者ではない課長補佐となっていたということです)。

裁判官は、残業代の支払い義務がない労働基準法の「管理監督者」に当たるかどうかの判断基準として(1)部門全体の統括的な立場、(2)部下に対する労務管理上の決定権、(3)管理職手当などの支給、(4)自分の出退勤の決定権-との要件を提示。
その上で「原告はプロジェクトのリーダーをしたことはあるが、メンバーやスケジュールの決定もできないなど要件に該当しない。経営者と一体的立場の管理監督者とはいえない」と指摘しました。

2008年11月、管理監督者ではない課長補佐にしたという点に、会社の「後ろめたさ」を感じざるを得ませんが…

業績が厳しい折、会社がコストダウンしたい気持ちは痛いほど分かります。
しかし、こういうところで「コストダウン」をはかっても、結局さらに大きなコストとして跳ね返ってしまいます。
また、働く人のモラールにも悪影響を与えます。

ポイントは、「当社の管理職の職務と権限」。ここをしっかり整備し、管理職の位置づけを明確にしましょう。

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2009年2月24日 (火)

名ばかり管理職問題で2年分の残業手当支払

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◆世間の注目を集めた「名ばかり管理職」問題ですが

昨年2月のマクドナルド店長訴訟で「名ばかり管理職」問題が世間の注目を集めました。

名ばかり管理職問題は何が問題なのでしょうか?
それは、次のようなことになります。

・労働基準法により「管理監督者」は労働時間規制が除外される。したがって、残業手当を」支払わなくてもいい。

・しかし、「管理監督者」と扱うには、待遇、権限など、しかるべき条件を満たさなくてはならない。

・実際には条件を満たしていないにもかかわらず、肩書きだけ与えて管理監督者扱いにている会社がある。これがいわゆる「名ばかり管理職」。
事実上、サービス残業になってしまっている。

◆残業代2年分の支払いを指導された例が

メールマガジン労働情報によると、北九州市立の計4病院で、実際には管理監督権限がないのに部長や副部長の肩書を持つ「名ばかり管理職」の医師に残業代などが支払われていなかった問題で、北九州市が今春以降の改善策を打ち出したのに対し、北九州東労働基準監督署が過去2年分の未払い分も支払うよう指導していたことが2月19日、分かったといことです。

市は4月から、部長や副部長職の医師計約150人に残業代などを支払うため2009年度予算案に約4億円を計上。過去の未払い分についても支払いを検討するとのことです。

賃金などの時効は2年となっています。
この時効にかからない分全額の支払が命じられたということです。
総額約4億円。大きいですね。遅延利息も入っているのでしょう。

賃金未払い残業、いわゆるサービス残業が摘発された場合、次のようなことになります。

・2年分に遡って支払う。
・その分の遅延利息(年6%)
・裁判になった場合、裁判所から同一額の付加金の支払を命じられることもある。つまり「倍返し」

名ばかり管理職問題に限らず、賃金未払い残業、いわゆるサービス残業がいかにリスキーかが、よくわかります。

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2008年12月 2日 (火)

こらからの管理職制度のあり方は?(2)

◆管理職の役割、機能を整理すると

管理職とはそもそもどんな人か?
労働基準法や判例の定義から少し離れて考えてみましょう。

私は、管理職の機能は、次の2つと考えています。

①経営補佐機能
②マネジメント機能

①が会社経営全体に、そして②が管轄部署に関わる機能ということになりますね。

そして、①の経営補佐機能を、どの程度のレベルで担っているかが、イコールその人のランク(ポスト)ということになります。

また、ランクによって、②の管轄部署の「サイズ」が異なってくるわけです。

◆管理統制機能と価値創造機能

ところで、この経営補佐機能とマネジメント機能は、さらに次のように分けることができます。

①経営補佐機能
a.計画・統制
b.事業創造、企業変革

②マネジメント機能
a.組織と人の管理
b.人材育成

これを見ていると、①のaと②のa、①のbと②のbは、共通の要素があるように思えます。

それは

①経営補佐機能-a.計画・統制、②マネジメント機能-a.組織と人の管理
=「管理統制機能」

①経営補佐機能-b.事業創造、企業変革、②マネジメント機能-b.人材育成
=「価値創出機能」

実際には、このようにすっぱりと分類できるものではありません。
また、これらの機能は、シームレスにつながっています。

しかし、このように整理して考えていくで、管理職制度の整備、そして管理職育成・登用を合理的につくっていくことができます。

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2008年12月 1日 (月)

こらからの管理職制度のあり方は?(1)

◆名ばかり管理職問題=残業問題ではない

マクドナルド店長訴訟をはじめ、「名ばかり管理職」の問題は、賃金未払い残業の問題として捉えられています。

これも確かに重要な問題です。

では、店長などの、いわゆる「グレーゾーン」の人たちに残業代を支払えば、それで問題は解決するのでしょうか?

◆管理職の役割、機能を再考すべし

実は、名ばかり管理職の問題を、残業代の問題に限定して捉えていると、問題の本質を見誤ります。
労働時間の問題を含めた、人材マネジメント上の問題として考える必要があるのです。

そもそも「管理職」とは何でしょうか?
ここが意外とあいまいになっていることが、少なくありません。
その典型が、かつて多く見られた「処遇用管理職」の乱造。
「○○代理」、「○○補佐」という役職がむやみとたくさんいたこと、ありませんか?

特に、年功序列人事では、これが起こります。

同じ部に部長を何人も置くわけにはいかない、しかし年次的にそろそろ何かポストをつけなくてはいけない…

こういう発想です。

このような人事の弊害は大きく、指揮命令系統の混乱、意思決定の遅れ、手続の煩雑化などをもたらしました。

その結果、何が起こったか?
「管理職不要論」の大合唱です。
実際、バブル崩壊後、リストラの標的にされたのは、中高年管理職だったのです。

この頃、中途採用面接で「あなたは何ができますか?」と聞かれ「私は部長ができます」と答えて失笑を買ったという話がありましたね。

言葉の本当の意味で「私は部長ができます」と言い切れれば、これは凄いことだと思いますけどね。
「私はマネジメントのプロです」と言っているわけですから。

でも、そういう話ではないわけですね。

◆管理職の役割が見直されている

では、本当に管理職は不要なのか?
まさか、です。

むしろ、リーダーシップをもった管理職が、いまほど必要とされている時代はないように思います。

では、そもそも管理職とは?
ここをしっかりおさえ、それをベースに人事制度や賃金制度を考えていくのが必要なわけですね。

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2008年11月18日 (火)

経営者と一体的な立場にあるとは?(4)

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◆管理職の意思決定権をめぐる裁判例

「経営者との一体性」を判定するポイントのひとつが、管理職の意思決定権です。

では、この点に関して過去の裁判はどのような判断をしているのでしょうか?

これについては、次の2つに整理して考えるのがいいでしょう。

1)管轄部門に関する決定
2)経営全般に関する決定

前回はこのうち、管轄部門に関する決定についていくつか判例を見てみました。
今回は、2番目の「経営全般に関する決定」についてみていきます。

◆経営全般に関する決定

<否定例>
売上集計や支店長不在時の会議の取りまとめ、支店長会議への出席あるいは朝礼時に支店長からの指示事項を伝えることはあっても、支店営業方針を決定する権限や、具体的な支店の販売計画等に関して独自に(中略)指揮命令を行う権限をもっていたと認めるに足りる証拠はない(ほるぷ事件)

本部において、社長、各営業課長、教務事務課長及び人事広報係を構成員とするチーフミーティングが開催されていた。(中略)チーフミーティングは、会社としての決定機関ではなく、会社の営業に関する事項を協議する場ではあっても、会社の経営事項そのものを協議する場ではなく、もとより社長の決定権限を左右するような権限、あるいは社長からの委任に基づく何らかの権限をも有するものではなかった。(育英舎事件)

「店長が会社全体の経営方針の決定に関与するということもない。」(マクドナルド事件)

<肯定例>
主たる業務内容は看護婦の募集業務全般であり、右業務の責任者として、自己の判断で看護婦の求人、募集のための業務計画、出張等の行動計画を立案し、これを実施する権限が与えられ(中略)自己の調査、判断によりその採否を決定(徳州会事件)

乗務員の採否についても、営業部次長の段階における履歴書の審査や面接で不採用とする場合があるし、専務の面接に進んだ者で不採用になった者がいない(姪浜タクシー事件)

◆判断基準は?

管轄部門だけでなく、会社経営全般についても、しかるべき権限があることが求められています。これもかなり厳しい要件と言っていいでしょう。

この部分は、解釈次第で範囲が相当異なってきます。厳しく解釈すれば、管理監督者になるのは、会社の幹部クラス(事業部長、本部長レベル)に限られてしまうということもあり得ます。

いわゆる「管理職」が管理監督者と認められるためには、経営意どのレベルまで関与させるかがポイントになってくるでしょう。

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2008年11月17日 (月)

経営者と一体的な立場にあるとは?(3)

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◆管理職の意思決定権をめぐる裁判例

前回、「経営者との一体性」を判定するポイントのひとつが、管理職の意思決定権だというお話をしました。

では、この点に関して過去の裁判はどのような判断をしているのでしょうか?

これについては、次の2つに整理して考えるのがいいでしょう。

1)管轄部門に関する決定
2)経営全般に関する決定

今回はこのうち、管轄部門に関する決定についてみていきます。

◆管轄部門に関する決定

<否定例>
店長は、(中略)次年度の損益計画の作成、販売促進活動の実施等についての一定の裁量を有し、また、店舗の支出について、一定の事項について決裁権限を有している。しかし、本社が決めた店舗の営業時間の設定には、事実上これに従うことが余儀なくされている。店長が店舗で独自のメニューを開発したり、価格を設定することは予定されていない。(マクドナルド事件)

社長が決定した方針に基づき、これを各課ミーティングを通じて配下の各教室長、専任講師、時間講師らに対して指示・伝達(育英舎事件)

<肯定例>
多数の乗務員を直接指揮・監督する立場にあった(中略)専務が業務の仔細にわたって具体的な決定をしていたとは考え難い(中略)専務から文書等による指示があるとはいえ、乗務員の労務ないし乗務の管理は、営業部次長がその判断等を行っていたものというべき(姪浜タクシー事件)

つまり、管理監督者と認められるには、管轄部門の業務計画を決定し、部門の業務運営についての事実上の決定をする権限が必要と言っていいでしょう。

逆に、決定事項について、その都度上位者の決済を仰がなくてはならないという場合は、権限があるとは言えないと判断される可能性が強くなります。

かなり厳しい要件ですね。

問題は、上位者の決済を仰ぐことなく決定できる事項がどれだけあるかということです。この範囲が狭いと、これまで述べてきたとおり、管理監督者とは認められなくなります。

ここでポイントになるのは、実態としてどのような運営が行われているのかということだと思われます。つまり、形式的・手続き的なことはともかく、業務運営において実際の決定者が誰になっているかということです。

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2008年11月13日 (木)

経営者と一体的な立場にあるとは?(2)

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◆管理職の「決定権」

前回お話したとおり、管理監督者と認定されるもっとも基本的な要件は、「経営者との一体性」です。

では、これはどう考えたらいいか?

私は「決定権」だと考えています。

◆管理職の権限は2種類

管理職にはさまざまな権限があります。
これは、次の2つに分類できます。

1)意思決定権
2)人事権

◆意思決定権

会社にいる人は、誰でも日々、何かしらの「意思決定」を行っています。一般社員でも、その日の業務の段取りや、社内外の関係者との打ち合わせのこと、あるいは顧客に何を提案するかといったことを、決定しています。

しかし、この意思決定は、自分の業務に関する事項です。
管理職以上のレベルの人の意思決定は、これとは根本的に異なります。それは、組織と人に関する意思決定を行うということなのです。

そして、この権限がどの程度備わっているかは、次の3つのポイントから見るのがいいでしょう。

1.意思決定の範囲:会社全体、部署、担当業務、など

2.意思決定の対象:予算、新製品企画など

3.意思決定の行為:決定する、提案する、など

ではこの点に関して、過去の裁判例はどう判断しているか、次回見ていきましょう。

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2008年11月11日 (火)

経営者と一体的な立場にあるとは?

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◆経営者との一体性がポイント

管理監督者の定義の中で、ベースにくるのが、「経営者との一体性」です。
これがあるから、労働時間の適用が除外されるし、一方で、それなりの処遇が求められるわけです。

通達(昭和63年3月14日、基発第150号)では「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」と、労務管理の部分に重点を置いていますが、判例を見ると、この部分に限っているわけではなく、事業計画など、経営全般にわたる事項に、どのような関与をしているかが問われています。

問題は「関わり方」。
特にポイントとなるのが、決定権ですね。

「名ばかり管理職」、「名ばかり店長」で問題になったのも、この部分です。
NHKで放映されていたのも、店長への指示書に、トイレ掃除のしかたまでこと細かに書かれているとう実態でした。
確かに、これで「管理監督者」に相応しい権限をもっているか、疑問符をつけられてもしかたありません。

権限は何もないのに、責任ばかり負わされる」
このような不満の声は、上がっていませんか?
もしこういう声が多ければ、管理職の権限や職務の実態を洗いなおす必要がありますね。

◆権限委譲はどこまで?

要は権限委譲をしっかり進めなくてはならないのですが、これがどの程度であれば、「管理監督者」と認められるのか。

ここの判断を厳しくしすぎると、管理監督者と呼べるのは役員レベルだけということにもなりかねません。
いや、場合によっては、社長だけということにもなります。

さりとて、緩めすぎると、「名ばかり管理職」を量産することになってしまいます。

この問題、少し続けます。
ポイントは「職務」です。

それでは、また。

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2008年10月23日 (木)

労働基準法の「管理監督者」とは?(13)

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◆管理職に対する労働時間管理をどう考える?

これまで通達で見てきたとおり、管理職に対して、遅刻・早退などに対する「減給の制裁」をしている場合、管理監督者とは認められない可能性が大きくなります。

では、管理職にタイムカードを打刻させたり、出勤簿などに出退勤時刻を記入させていると、管理監督者とは認められなくなるのでしょうか?
逆に、タイムカードの打刻などをさせていなければ、労働時間の自己裁量性があると認められるのでしょうか?

答えは、いずれも「否」です。

もっと言えば、この部分だけを見ていても、答えは出てきません。

◆管理職に対する「労働時間把握算定義務」は?

管理監督者については、労働時間規制の適用が除外されています。
同時に、「労働時間把握算定義務」も免除されます。

したがって、会社は管理職の労働時間を把握していなくても、違法とはなりません。

では、逆に、労働時間を把握算定していると、管理監督者と認められなくなるのかというと、そうではありません。

このあたりが、何ともわかりにくく、悩ましいところですが。

◆厳密な管理はできない

ここでポイントになるのは、「労働時間の管理」と「労働時間の把握算定」は切り分けて考えるということです。

出退勤時刻や休日について、一般社員と同様に管理されている状態だと、管理監督者として認められなくなります。
しかし、労働時間を把握算定することは、「やらなくてもいいが、やっても問題はない」ということです。

実務的には、次の面から、自己申告など何らかの形で管理監督者の出退勤時刻を把握する必要があります。

・深夜業(管理監督者も適用除外されていない)
・長時間労働者に対する医師の面接指導

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2008年10月14日 (火)

セミナー「名ばかり管理職は会社のリスク」を開催します!

11月25日(火)13:20、東京都中小企業会館(銀座)にて開催
お申込はこちらから!
http://www.hrm-solution.jp/plugins/form/?id=12

いわゆる「名ばかり管理職」の問題は、日本中の会社に大きな波紋を呼んでいます。
労働基準法が定める管理監督者の定義が、改めてクローズアップされ、それとともに、残業手当の支払対象を見直す企業が相次いでいます。
特に、全国的に店舗展開し、店長を管理監督者としていた大手流通・外食産業にその動きが顕著です。
これは対岸の火事ではありません。
管理職がいるすべての会社が抱えるリスクなのです。

法的リスクというだけではありません。
管理職は、組織の現在と将来を左右する、重要な経営課題なのです。
組織の要たる管理職の役割は何か、活性化するにはどうするべきなのかという問題が投げかけられています。

セミナーでは、労務リスクを防ぎ、会社を活性化する管理職制度をどうすれば
いいかを、次の2つのポイントから解説します。
活力ある会社づくりにお役立てください!

1)法的に管理監督者と認められるポイントはどこにあるのか
2)管理職を適正に処遇し、活性化する人事制度づくりのノウハウ

◆実施要綱
・日時:11/25(火)13:20~16:50
・会場:東京都中小企業会館(13:00~17:00)
・主催:社労士事務所HRMオフィス
     社会保険労務士杉山秀文
・受講料:テキスト代込み8,000円(消費税込み)
※テキスト「名ばかり管理職リスク」を見直す!(日本法令)」
・申込〆切:11/17(月)

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◆プログラム
1.名ばかり管理職問題とは何か 13:20~13:50
(1)名ばかり管理職問題がおこる背景
(2)名ばかり管理職問題は何が問題なのか

2.法律上の管理職とは? 13:50~14:40
(1)労働基準法と通達
(2)判例
(3)管理職をめぐる法律

3.管理監督者と認定されるポイントは? 14:40~15:20
(1)管理職の権限
(2)労働時間の自己裁量性
(3)待遇

4.管理職を戦力化し活性化する人事制度をどうつくるか 15:30~16:50
(1)管理職の役割と機能を見直す
(2)人事制度構築のポイント
  格付け
  人事評価
  賃金制度

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労働基準法の「管理監督者」とは?(12)~通達より(12)

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◆労働時間に関する自己裁量性とは?

前にも書いた通り、労働時間の自己裁量性とは、次のようなことになります。

・自分の出退勤について会社から管理を受けているか、自己裁量にまかされているか
・業務時間の配分などについて自己裁量に任されているか

◆遅刻・早退をしたときの賃金カットは?

では、管理職が遅刻や早退をした場合、その分の賃金カットはできるのでしょうか?
この点は、タイムカードによる出退勤管理がなされ、欠勤・遅刻にはそれに応じて賃金減額をされていたものの、このことが管理監督者性の判断を左右するものではないとした裁判例もあります。(パルシングオー事件・東京地裁・平成9年1月28日)。

つまり、遅刻や早退の時間に対応した分の賃金を支払わなくても、ただちに管理監督者性が否定されるわけではないということです。
つまり、これはあくまでも、「ノーワーク・ノーペイ」の原則に則った賃金計算の範囲内ということなのでしょう。

ただ、出退勤について厳格な管理を受け、遅刻などについて上司から注意を受けるような状況だと、管理監督者性が否定されています。

そもそも、自己裁量にまかされている状態にありながら、遅刻早退の減額は「管理監督者性の判断を左右するものではない」というのは、どうにも理解に苦しむのですが…
トータルで業務実態がどうであったかということになりますね。

◆通達の「遅刻、早退等により減給の制裁」とは

さて、通達には次のよう記述があります。

「遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる」

今日のお話に関係するのは、この「減給の制裁」という部分。
ここは注意が必要です。

減給の制裁は、「職場規律に違反した労働者に対する制裁として、本来ならばその労働者が受けるべき賃金のなかから一定額を差し引くことをいう。したがって、遅刻、早退又は欠勤に対して労働の提供がなかった時間に相当する賃金だけを差し引くことは、そのような賃金制度のもとにおける1つの賃金計算方法であって、本条にいう制裁としての減給に該当するものではない。しかしながら、遅刻早退の時間に対する賃金額を超える減給は制裁とみなされ、法第91条に定める制裁に関する規定の適用を受けることになる」(昭和63年3月14日・基発第150号)ということです。

つまり、遅刻や早退の時間に対応した分の賃金をカットすることは、「減給の制裁」にはなりません。
それを超える額をカットする場合は「減給の制裁」となり、もし管理職にそれをやった場合は、「管理監督者性を否定する重要な要素となる」ということなのです。

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2008年10月 6日 (月)

法に適合する管理職は?~通達の補足説明が厚労省から出ました

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◆9月9日の管理監督者判定基準はレッドカード、イエローカードの判断材料

内容はこちら
http://hrm-consul.cocolog-nifty.com/hrmconsul2/2008/09/22200899-f844.html

この通達は、多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗を対象に作られたものですが、それ以外の業種が無関係というわけではありません。
自社の「管理職」が法律上の「管理監督者」に適合するかを判断する際の参考材料になります。

というのも、内容は、これまでの通達や判例を踏襲したものであって、新たな判断基準を打ち出したというわけではないからです。

また、管理監督者に該当するかどうかは、これを見れば全部分かるというわけでもありません。

通達の冒頭に、こんな記述があります。

「なお、下記に整理した内容は、いずれも管理監督者性を否定する要素に係るものであるが、これらの否定要素が認められない場合であっても、直ちに管理監督者性が肯定されることになるものではないことに留意されたい」

そして、それぞれの項目は内容はほとんど「~の場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる」という言葉で〆られています。

「こういう場合は×」とは言っているものの「こういう場合は○」とは言っていないわけです。

これで判断基準と言えるのかという気もしますが…

つまり、こう考えなくてはなりません。

・これまで出された通達、判例が判断の基本
・新しい通達は、レッドカード、イエローカードの判断材料
・この判断基準がレッドカード、イエローカードののすべてではない

◆通達に批判噴出

当然というべきか、この新しい通達には、多くの批判の声が上がりました。

その代表的なものは、「この基準にひっかからなければ管理監督者と扱ってよいと思われてしまう」というもの。

前述の通り、この通達はあくまでも、「この場合はレッドカード、イエローカード」という基準を示したものであり、しかもすべてを網羅しているわけではありません。

とは言いましてもねぇ…
通達原文をきちんと読む経営者、実務担当者がどれだけいます?
多くの人は、新聞報道などを見て、「これに出ていることを注意すればOK」と思ってしまいます。
(通達の文章も、とても回りくどく、分かりにくい。)

特に、新通達から抜けていた重要な要素が、「経営者との一体性」。
(この要素は、実際、判断が難しいところですが。)

また、労働側が懸念したのは、この通達が一人歩きし、「デファクト・スタンダード」となる、つまり、基準がなし崩し的に緩んでしまうことだったのではないでしょうか。

今の基準が適切なものかどうかは、議論のあるところです。
しかし、きちんとした議論なしに、基準が変わっていくということは許されません。

◆厚生労働省が補足的な通達を出しました

批判を受けてか、厚労省が、補足的な通達を出しました。
泥縄という感じもしますが…

ポイントは次の3点です。

1)基本的な判断基準を変更したり、緩めたりしたものではない。
2)通達は管理監督者性が否定される要素を具体的に示したものであり、これらに該当しない場合には管理監督者性が認められるという反対解釈が許されるものではない。
3)労務管理について経営者と一体的な立場にあるか否かは慎重に判断すべきものである

以下、通達全文をご紹介します。

-----
基監発第1003001号
平成20年10月3日

多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化を図るための周知等に当たって留意すべき事項について

標記については、平成20年9月9日付け基発第0909001号「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」(以下「通達」という。)等により当該店舗における労働基準法(昭和22年法律第49号)第41条第2号に規定する「監督若しくは管理の地位にあるもの」(以下「管理監督者」という。)の範囲の適正化を図るよう指示されたところである。

通達については、一部に、管理監督者の範囲について誤解を生じさせかねないとの意見があることを踏まえ、管理監督者の範囲の適正化を図るための周知及び監督指導等に当たっては、以下の点について十分留意の上懇切丁寧な説明を行い、通達の趣旨・内容が正確に理解されるよう配意されたい。

(1) 通達は、店舗の店長等について、十分な権限、相応の待遇等が与えられていないにもかかわらず管理監督者として取り扱われるなど不適切な事案もみられることから、その範囲の適正化を図ることを目的として発出したものであること。

(2) 通達は、昭和22年9月13日付け発基第17号・昭和63年3月14日付け基発第150号(以下「基本通達」という。)で示された管理監督者についての基本的な判断基準の枠内で、店舗における特徴的な管理監督者の判断要素を整理したものであるので、基本的な判断基準を変更したり、緩めたりしたものではないこと。

(3) 通達で示した判断要素は、監督指導において把握した管理監督者の範囲を逸脱した事例を基に管理監督者性を否定する要素を整理したものであり、これらに一つでも該当する場合には、管理監督者に該当しない可能性が大きいと考えられるものであること。

(4) 通達においては、これらに該当すれば管理監督者性が否定される要素を具体的に示したものであり、これらに該当しない場合には管理監督者性が認められるという反対解釈が許されるものではないこと。これらに該当しない場合には、基本通達において示された「職務内容、責任と権限」、「勤務態様」及び「賃金等の待遇」の実態を踏まえ、労務管理について経営者と一体的な立場にあるか否かを慎重に判断すべきものであること。

なお、別添のとおり「「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」に関するQ&A」を取りまとめたので、説明等に当たって参考とされたい。

「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について(平成20年9月9日付け基発第0909001号)」に関するQ&A

問1 今回の通達を発出した理由は何ですか。

答 今回の通達は、「名ばかり管理職」として、多店舗展開企業における小規模な店舗の店長等について、十分な権限、相応の待遇が与えられていないにもかかわらず、労働基準法上の管理監督者であるとして、長時間労働を行わせるなど不適切な事案がみられることから、こうした事態に対処し、管理監督者の範囲の適正化を図る目的で出したものです。

問2 今回の通達で示された判断要素は、管理監督者に係る「基本的な判断基準(昭和22年発基17号・昭和63年基発150号。以下同じ。)」を緩めているのではないですか。

答 今回の通達では、「基本的な判断基準」において示された職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇に関する基準の枠内において、また、いわゆるチェーン展開する店舗等における店長等の実態を踏まえ、最近の裁判例も参考にして、特徴的に認められる管理監督者性を否定する要素を整理したものです。

したがって、「基本的な判断基準」を変更したり、緩めたりしたものではなく、逸脱事例を具体的に示すことで、「基本的な判断基準」が適正に運用されるようにするものです。

問3 今回の通達で示された否定要素に当てはまらない場合は、管理監督者であると判断されるのですか。

答 今回の通達で示された否定要素は、監督指導において把握した管理監督者の範囲を逸脱した事例を基に整理したものであり、すべて管理監督者性を否定する要素です。したがって、これに一つでも該当する場合には、管理監督者に該当しない可能性が大きいと考えられます。

一方、こうした否定要素の性格からは、「これに該当しない場合は管理監督者性が肯定される」という反対解釈が許されるものではありません。仮に、今回の通達で示された否定要素に当てはまらない場合であっても、実態に照らし、「基本的な判断基準」に従って総合的に管理監督者性を判断し、その結果、管理監督者性が否定されることが当然あり得るものです。

問4 「重要な要素」と「補強要素」を区分けして示した理由は何ですか。

答 今回の通達で示した要素は、いずれも重視すべき要素ですが、その中でも「重要な要素」は、監督指導において把握した実態を踏まえ、これらの事項すら満たされていないのであれば、管理監督者性が否定される可能性が特に大きいと考えられる逸脱事例を強調して示したものです。

問5 今回の通達で「職務内容、責任と権限」について挙げられている要素だけでは、労務管理について経営者と一体的な立場にある重要な職務と権限を有するとは言い難いのではないですか。

答 「基本的な判断基準」において、管理監督者は「労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意」であるとされ、その範囲として、「労働時間等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し」ていることとされています。今回の通達は、「基本的な判断基準」を前提として、その枠内で、監督指導において把握した実態を踏まえ、裁判例も参考にして、管理監督者性を否定する特徴的な判断要素を示したものであって、これに該当すれば、労務管理について経営者と一体的な立場にある重要な職務と権限を有するものとして管理監督者性が肯定される、という要素を示したものではありません。

問6 店長であればパートタイマー等の採用権限があるのは当たり前であって、判断要素にならないのではないですか。

答 監督指導において把握した実態においては、店長であってもパートタイマー等の採用権限がないケースが認められたところです。また、今回の通達の対象は、店舗の店長だけではなく、その部下であって管理監督者として取り扱われている者も対象としていますが、このような者については、パートタイマー等の採用権限がない者が多い実態にあるので、判断要素として有効に機能するものと考えています。

なお、店舗における管理監督者の判断に当たっては、裁判例においてもパートタイマー等の採用権限の有無について判断しています。

問7 今回の判断要素の中で、「時間単価に換算した賃金額が最低賃金額に満たない場合」などのあまりに低い水準を示したにすぎない判断要素は、これによって管理監督者性が否定されるものはまれであるばかりか、結果として管理監督者の範囲を広げることになるではないですか。

答 今回の判断要素は、監督指導で把握した管理監督者の逸脱事例を踏まえ示したものであり、ご質問のような「基本的な判断基準」からの逸脱が特に著しく、問題であると考えられる実態も認められたため、否定要素として挙げたものです。

もちろん、実際の労働時間数に応じて時間単価に換算した賃金額が最低賃金額を上回ったとしても、管理監督者性が肯定されることにはならないのは当然のことです。(問3参照)

むしろ、「基本的な判断基準」において、管理監督者は賃金等についてその地位にふさわしい待遇がなされていること、とされており、最低賃金額に近い賃金水準である場合などには、当然これを満たさないこととなります。

問8 「賃金等の待遇」についての「アルバイト・パートの賃金額」「時間単価換算した場合の最低賃金額」などの要素は当然のことを言っているに過ぎず、むしろ補強要素として示されている「基本給、役職手当等の優遇措置」や「支払われた賃金の総額」の要素こそ重視されるべきではないですか。

答 今回の通達で示した要素は、いずれも管理監督者性の判断に当たって重視すべき要素であり、補強要素としているものについても、重視されるべきことに変わりはありません。(問4参照)

時間単価に換算した賃金額を比較した判断要素は、仮に賃金について何らかの優遇措置が講じられているとしても、実態として長時間労働を余儀なくされている場合には、実際の労働時間数で賃金額を割り戻すと、優遇どころか、実質的にはアルバイト・パート等の賃金額や、さらには最低賃金額にも満たないようなケースもあり、このような場合には、管理監督者性が否定されて当然と考えられることから、重要な否定要素として、特に示したものです。

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2008年10月 2日 (木)

労働基準法の「管理監督者」とは?(11)~通達より(11)

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◆労働時間の自己裁量性

労働時間の自己裁量性とは、次のようなことになります。

・自分の出退勤について会社から管理を受けているか、自己裁量にまかされているか
・業務時間の配分などについて自己裁量に任されているか

ここは重要なポイントです。
管理監督者は、労働時間、休憩、休日の適用が除外されています。
それが許されるためには、その人が自分の労働時間に関して、裁量権を有していなくてはならないのです。

したがって、出退勤時刻についても、会社から厳密な管理を受けず、自己裁量に任されている状態にしなくてはなりません。

しかし、店舗などの場合、難しい問題があります。
責任者である店長が、開店時間にいないという状態が許されるのかどうか。

ただ、24時間営業などの場合、店長がいつも店舗にいるわけにはいきません。
店長不在の時間が当然あるわけです。

つまり、どの時間に、どこで、どのような仕事をしているかを、自分で決めることができなくてはならないということですね。

通達は、次のように示しています。

------------
(1) 遅刻、早退等に関する取扱い
遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
------------

この問題、もう少し続けます。

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2008年9月30日 (火)

労働基準法の「管理監督者」とは?(10)~通達より(10)

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◆人事考課

通達には、次のように記載されています。

人事考課(昇給、昇格、賞与等を決定するため労働者の業務遂行能力、業務成績等を評価することをいう。以下同じ。)の制度がある企業において、その対象となっている部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。

これも、判断は微妙ですね。
まず、確かなことは、人事考課にまったくタッチしないような場合は、管理監督者性が否定されるということです。

一方、部下の人事考課を実施し、かつ、その結果が、最終考課として決定するような場合は、この部分に関しては管理監督者性が肯定されます。

問題はその中間の場合です。

一般的に、人事考課では、現場の管理職がつけた考課を、上位者が「二次考課」をし、さらに全社調整を行って確定させます。

そのような場合、この管理職は、管理監督者としての権限をもっていると言えるのか?

少なくとも、「人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合」にはならないでしょう。

しかし、マクドナルドの店長の場合、アルバイトの人事考課と、社員の一次考課を行っていましたが、社員の人事考課の最終決定は、上位者による二次評価や三者面談、評価会議となっていました。
そして、このことが、店長の管理監督者性を否定する要因のひとつになっていたのです。

同社の人事考課の実態、つまり、一次考課以降の考課決定プロセス、店長の決定への関与度合い、一次考課の変更の頻度などがどうであったのかがよく分からないので、即断はできません。
このあたりが、実際にどのように運営されていたから、判断ポイントになってくると思われます。

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2008年9月29日 (月)

労働基準法の「管理監督者」とは?(9)~通達より(9)

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◆解雇に関する権限

通達には、次のように記載されています。

(2) 解雇
店舗に所属するアルバイト・パート等の解雇に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。

つまり、少なくとも、アルバイトやパートの解雇に関する権限がないと、管理監督者とは認めがたいというわけです。

では「権限」とは何か?

決定権があれば、文句なしでしょう。
しかし、店長に限らず、現場の管理職が、アルバイトやパートといえども、解雇という重要な人事を決定する権限まではもっていないことも少なくないのではないでしょうか?

企業規模にもよりますが、最終的な決定は、本社人事部が行うということが、珍しくありません。

ただ、一方で、アルバイトやパートのことまで、すべて本社人事部がやることは不可能ということも、規模によってはあります。
その場合は、現場の店長などが、決定権ももつことになります。

以上から、最終決定が本社人事部だとしても、店長は、アルバイトやパートの解雇について、実質的な決定権がある、つまり、相当強い影響力を及ぼすことができるということが、必要になります。

では、正社員の解雇については、どうでしょうか。
この場合、現場の管理職が決定権をもつということは、まずないでしょう。
大規模な工場、事業部の工場長、事業部長や、大規模店舗の店長といったレベルの人であれば別ですが、ファストフードなどの店長クラスや課長クラスの人に、そこまでの責任と権限を負わせるのは、酷な気がします。

しかし、現場の管理職のまったく知らないところで、部下の解雇が一方的に決められるような実態にあったら、どうでしょうか?

そのような場合は、やはり、管理監督者性が否定される可能性が大いにあります。
意見を述べる、決定に影響力を及ぼせるといった権限が必要といっていいでしょう。

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2008年9月22日 (月)

労働基準法の「管理監督者」とは?(8)~通達より(8)

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◆厚生労働省の新しい通達

管理監督者に該当するかどうかの判断基準として、厚生労働省は9月9日、新しい通達を出しました。

内容はこちらです。
http://hrm-consul.cocolog-nifty.com/hrmconsul2/2008/09/22200899-f844.html

これは、「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」と題されている通り、小売・飲食業を対象にした通達です。

マクドナルド事件に代表されるように、「名ばかり管理職」の問題が、全国的に店舗展開している流通や外食産業で頻発していることを受けてのものですね。

基本的にはこれまで出されてきた通達と同じですが、より具体的になっています。
業種を問わず、参考になるものですので、これから数回にわたって、内容を見ていきましょう。

◆採用に関する権限

通達は、「店舗に所属するアルバイト・パート等の採用(人選のみを行う場合も含む。)に関する責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。」としています。

つまり、店長に、アルバイトやパートの採用権限がない場合は、管理監督者性が否定される可能性が大きいとしているのです。

「採用権限」とは何を指すのでしょうか?
通達では、「人選のみを行う場合も含む」としています。
つまり、最終的な決定権は本社人事部にあっても、人選を行う権限があればよさそうです。

ここは微妙ですね。
人選は店長がやっても、本社人事部が、その判断を無視して採用を決めているようなことが、もし仮にあれば、どうなるのか?
つまり、店長の採用権限が形骸化しているケースです。

恐らく、管理監督者性は否定されるでしょう。
実質的な権限がどうなっているのかが、ポイントになります。

次に気になるのは、店舗に所属するアルバイト・パート等の採用権限があれば、管理監督者性が肯定されるのか、という点です。

マクドナルド判決では、次のように指摘し、管理監督者性を否定しています。
「店舗の責任者として、アルバイト従業員の採用や、従業員の勤務シフトの決定等の権限を行使し、会社の方針に即して店舗運営をする立場から、店舗運営においては重要な職責を負うものの、その職務や権限は店舗内の事項に限られる。」

つまり、店舗に所属するアルバイト・パート等の採用権限があっても、権限が店舗内の事項に限られる場合は、管理監督者性が否定される可能性が大きいということです。

以上から、次のように考えられるのではないでしょうか。

・アルバイト・パート等の採用権限は、管理監督者性の必要条件だが、十分条件ではない。
・管理監督者性が認められるためには、アルバイト・パート等の採用権限に加えて、従業員の人事に関する権限がなくてはならない。

◆総合的な判断が必要

ここで頭においていただきたいことは、「総合的に判断すべし」ということです。
特定の要素だけに着目していると、判断を誤ります。
経営者との一体性、労働時間に関する自己裁量性、待遇など、さまざまな要素を総合的に見て、管理監督者としての実態を備えているかを判断しなくてはなりません。

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2008年9月19日 (金)

マクドナルド元店長の遺族が労災申請

◆マクドナルド元店長の遺族が労災申請

9月10日の「メールマガジン労働情報」によると、日本マクドナルドの元女性店長=神奈川県、当時(41)=が昨年10月、勤務中に倒れくも膜下出血で死亡したのは長時間労働が原因として、遺族が5日、横浜南労働基準監督署に労災申請したということです。

記事によると、1カ月の残業時間は、会社の勤務記録では40時間未満の月が多かったが、通勤に使っていた車の駐車場の入出庫記録や家族に送ったメールから、昨年4月には89時間、5月と7月には100時間を超えていたと推測されるとのこと。

◆名ばかり管理職問題に通じるものがあります

この事件は、いわゆる過労死問題と捉えられます。
ただ、注目すべきは、死亡した方が、店長だったということ。
管理職扱いだったと思われます。

この方が、労基法の管理監督者にあたるかどうかは、同社の裁判が、現在高裁で争われている最中でもあり、ここで何らかの判断をすることはできません。
ただ、最近頻発している「名ばかり管理職問題」の背景のひとつに、店長の長時間労働があることは確かです。

管理監督者性の認定要件のひとつに、労働時間に関する自己裁量性があります。
またこれは、その人に与えれれている権限の実態と表裏の関係にあります。

多忙であっても、本人に十分な権限があれば、管理監督者として認定され得ます。
しかし、健康障害や過労死につながるほどの長時間労働であった場合、否認される可能性が大きくなります。
そのような長時間労働を、「自己裁量」でやっていたとは言えないと判断されるのです。

その点で、会社は管理職の業務実態を、何らかの方法で把握する必要があるのです。

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2008年9月18日 (木)

労働基準法の「管理監督者」とは?(7)~通達より(7)

◆専門職制度

専門職制度を設ける会社は少なくありません。
ラインマネジメントにはつかず、高度な専門性を活かして、会社の価値拡大に貢献する人材という位置づけです。

研究員、アナリスト、コンサルタントといった職種が典型例です。

こうした社員の多くは、管理職扱いになっています。

それは、高度な専門家というレベルに到達するのは、しかるべき経験が必要だという理由からです。
また、それなりの人材なのだから、待遇も管理職レベルにするというわけです。

それ以外に、管理職ポスト不足という理由も上げられます。
特に年功序列の人事制度の場合、それなりの年齢・勤続を積んだ人は、それなりの処遇と肩書きを与えます。
しかし、ポストに空きがない場合、「専門職」に任命するのです。
専門性があるかどうかは別にして…

◆専門職は管理監督者か?

では、こうした専門職は、労基法上の「管理監督者」扱いにできるのでしょうか?
この点、通達は次のように指摘しています。

---
スタッフ職の取扱い

法制定当時には、あまり見られなかったいわゆるスタッフ職が、本社の企画、調査等の部門に多く配置されており、これらスタッフの企業内における処遇の程度によっては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられ、かつ、法が監督者のほかに、管理者も含めていることに着目して、一定の範囲の者については、同法41条第2号外該当者に含めて取り扱うことが妥当であると考えられること。
---

つまり、しかるべき権限と処遇を与えていれば、管理監督者として扱っても問題はないということです。

そうなると、前述の専門職のうち、ポスト不足対策として生まれた「処遇用専門職」がどうなのか、微妙な感じがしますね。

◆基本は人事戦略

法的適合性も重要ですが、もっと大事なのは、会社の人事戦略です。
つまり、会社にとって、どのような専門家が、どのぐらい必要なのか、そして、その人たちにどのように会社に貢献してもらうのかという視点です。

このような目線で、会社の専門職をどう位置づけるか、処遇をどうするかを、ぜひ考え直してください。

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2008年9月17日 (水)

労働基準法の「管理監督者」とは?(6)~通達より(6)

◆管理職の待遇

「管理職」というからには、それなりにいい待遇でなくてはなりません。
これは一般的なイメージですが、法的にも重要な意味をもちます。

というのも、管理監督者は、労働時間という、重要な規定の適用が除外されます。
これは、ひとつには、職務内容や権限からいって、労働時間規制に馴染まないということがあるのですが、もうひとつの要因として、賃金などで優遇されていることが上げられます。

つまり、優遇措置が講じられているから、労働時間規定の適用を除外しても、労働者保護に欠けることはないというわけです。

◆賃金で優遇されているとは?

これは、賞与などを含めたトータル年収を見ます。
ポイントになるのが、非管理職の、残業手当・休日出勤手当を含めた額に対して、管理職の賃金がどうなっているか、です。

管理職になったらこれまでより月収が下がったということがあります。
会社に悪意がなくても、残業時間が長かった人の場合、このようなことが起こり得ます。

また、ベテランの係長(非管理職)の月収の方が、若手管理職の月収より高いということも、わりとよく聞く話です。

これも、ひとつには残業時間、もうひとつは、年功序列賃金が原因と言っていいでしょう。

しかし、通達は、次のように記しています。

管理監督者であるかの判定にあたっては、上記のほか、賃金等の待遇面についても無視しえないものであること。この場合、定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定起訴賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があること。なお、一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。

◆これからの管理職賃金

この問題は、現実には結構悩ましいところがあります。
もし前述のような実態にある場合、一気に解決することは難しいかもしれません。

とは言っても、今後の労務リスク、そして管理職の活性化・戦力化を考えると、放置はできません。

さらに言うと、この問題を管理職の部分だけに限定して考えていても、問題の解決にはなりません。

・非管理職も含め、賃金体系を年功序列から、仕事や実績に対応したものに変えていく
・全社的に労働時間の短縮を進める

---この2つの人事政策とセットで進めていく必要があるのです。

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2008年9月16日 (火)

労働基準法の「管理監督者」とは?(5)~通達より(5)

◆会社の等級制度と管理監督者の判断

会社は従業員を、何らかの基準でランク付けをします。
このランク付けが、賃金などの処遇の基準になってきます。

従業員をランク付けする場合、何からの基準がなくてはなりません。
ここがはっきりしないまま、勤続年数や実績、年齢などでランク付けしている会社も少なくありません。
また、感覚的に「できる社員・できない社員」をとらえている例もあります。

ただ、これだと、基準が曖昧で、合理性に欠けます。納得性もありません。
人材活用を真剣に考えている会社は、格付基準を整備しています。

また、ランク付けで一番シンプルなのは、役職ポストがそのままランク付けとイコールにすることです。
ただ、この場合、役職ポストの数、つまり組織の形態に格付が縛られることになります。
ポスト不足、あるいはその逆の問題が、常に発生します。

また、役職というのは、管理職を指すことが一般的なので、スペシャリストのランク付けには向いていません。

そんなことから、役職とは別に格付制度を設けることになります。
一般的に、「等級制度」といいます。

そして、「○等級:課長、○等級:部長」というように、等級と役職ポストの関係を定義します。

では、この「等級」と、管理監督者の関係は、どうなるのでしょうか?
また、等級は管理職と同等だが、役職についていない人については、どう考えたらいいのでしょうか?

この点について、通達は、次のように記しています。

一般に、企業においては、職務の内容と権限等に応じた地位(以下「職位」という。)と経験、能力等に基づく格付(以下「資格」という。)とによって人事管理が行われている場合があるが、管理監督者の範囲を決めるにあたっては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること

要するに、実態に基づいて判断せよということなのですが…
実際のところ、ここが悩ましいのですよね。

詳しくは、これから、いろいろな角度から見ていきますが、とりあえず、通達のこの部分は押さえておきましょう。

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2008年9月12日 (金)

労働基準法の「管理監督者」とは?(4)~通達より(4)

昭和63年3月14日の厚生労働省(当時は労働省)の通達、基発第150号「監督又は管理の地位にある者の範囲」のお話を続けます。

◆適用除外の趣旨

これらの職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として法41条による適用の除外が認められる趣旨であること。従って、その範囲はその限りに、限定しなければならないものであること。

ここが一番中心となる部分です。

◆経営者との一体性

管理監督者と認定される基準として重要なのは、「経営者との一体性」です。

つまり、労務管理について経営者と一体的な立場にあり、経営に関する決定に参画しているということです。

では、どのような場合に、経営者と一体的な立場にあると言えるのでしょうか?
これは、最終的には個々の具体的なケースに応じて判断していくしかありません。
ブログでは項を改めて、この点に関する過去の判例などをひもとき、判断基準を検討しようと思っています。

◆労働時間に関する自己裁量性

このような立場にある人に、労働時間の厳密な管理はなじみません。
それが、通達の「現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者」という文言につながります。

つまり、厳格な労働時間管理をしているかどうかが、判断基準のひとつになります。
その点に関しては、裁量労働制などに通じるものがあります。
しかし、裁量労働制の場合は、専門業務や企画業務などの、いわゆる「知的業務」という点に着目した制度です。
このような業務は、労働時間と仕事の成果が比例しないし、業務の進め方も本人の裁量に任せた方がいいため、みなし労働時間を適用するわけです。
一方、管理監督者の場合は、職務と権限からみて、労働時間を管理することが不適切だということです。

これも項をあらためて、過去の判例などから具体例をみていきます。

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2008年9月11日 (木)

労働基準法の「管理監督者」とは?(3)~通達より(3)

今回から、昭和63年3月14日の厚生労働省(当時は労働省)の通達、基発第150号「監督又は管理の地位にある者の範囲」について、見ていきましょう。

◆通達の原則

通達は冒頭、「法に規定する労働時間、休憩、休日等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合には、法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則であり、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であれば全てが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと」と指摘しています。

この点は、9月4日の記事「要注意!会社の決める「管理職」と法の「管理監督者」はイコールではない」http://hrm-consul.cocolog-nifty.com/hrmconsul2/2008/09/post-e7d0.htmlでも指摘したとおりです。

ポイントは、会社の人事制度、人事政策と、法の定義との間に、必ずワンステップ置くことです。

◆労働時間の基本原則は変わらない

また、通達の「労働時間、休憩、休日等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合には、法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則」という部分も重要です。

働き方の多様化が進んでいます。
また、ホワイトカラーを中心に、時間と成果が一致しない仕事が増えています。
働く場所も、オフィスの中だけとは限りません。

さらに、ワークライフバランスへの対応も、会社の人事施策の重要なテーマになっています。

このような状況を受けて、労働時間法制も、次のように、新しい働き方に対応した制度を取り入れています。
・専門業務型裁量労働制
・企画業務型裁量労働制
・事業場外みなし労働時間制
・フレックスタイム制

しかし、労働基準法の大原則は、「会社は働く人の労働時間を把握算定し、それに対応した賃金を支払うべし」です。

上記のような、柔軟な労働時間制度は、労働基準法上はあくまでも例外です。
だから、このような制度を取り入れる場合、様々なハードルが課されているのです。

この点を、会社はしっかり認識しなくてはなりません。

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2008年9月10日 (水)

労働基準法の「管理監督者」とは?(2)~通達より(2)~2008年9月9日・小売業、飲食店を対象にした通達

◆名ばかり管理職問題は流通・小売から起こった

個々の企業の「管理職」が、労働基準法の「管理監督者」に該当するのかどうか--
悩ましい問題です。

これをめぐって、これまで数多くの裁判が起こされてきました。
直近では、ご存知の「マクドナルド店長訴訟」。

同事件もそうですが、最近問題が多発しているのが、全国的に店舗展開している流通・外食産業です。

・店舗を構える以上、責任者をおかなくてはならない
・しかし本社の管理職クラスの社員を、ずべての店舗に配置することは無理

--こんな事情が背景にあります。

つまり、管理職不足。
そのために、これまでなら管理職にしなかった人を、無理やり管理職に据えるという人事を行わざるを得なくなるのです。

そう考えると、この問題は、流通・小売に限った問題ではないということが、よく分かります。
同様のことは、業種を問わずどの会社でも起こり得ますし、現実に起こっています。

対岸の火事ではありません。

◆厚生労働省から新しい通達が

問題の多発を受け、厚生労働省は9月9日、小売業、飲食店を対象にした通達を出しました。

詳しい解説は、後日しますので、今日は新しい通達の全文をご紹介します。

次回から、昨日ご紹介した、昭和63年3月14日の通達(最新の通達もこれが基本になっています)の解説を掲載していきます。

----------------

基発第0909001号
平成20年9月9日

多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について

小売業、飲食業等において、いわゆるチェーン店の形態により相当数の店舗を展開して事業活動を行う企業における比較的小規模の店舗においては、店長等の少数の正社員と多数のアルバイト・パート等により運営されている実態がみられるが、この店舗の店長等については、十分な権限、相応の待遇等が与えられていないにもかかわらず労働基準法(昭和22年法律第49号)第41条第2号に規定する「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」という。)として取り扱われるなど不適切な事案もみられるところである。

店舗の店長等が管理監督者に該当するか否かについては、昭和22年9月13日付け発基第17号、昭和63年3月14日付け基発第150号に基づき、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって、労働時間、休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを、職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえ、総合的に判断することとなるが、今般、店舗の店長等の管理監督者性の判断に当たっての特徴的な要素について、店舗における実態を踏まえ、最近の裁判例も参考として、下記のとおり整理したところである。ついては、これらの要素も踏まえて判断することにより、店舗における管理監督者の範囲の適正化を図られたい。

なお、下記に整理した内容は、いずれも管理監督者性を否定する要素に係るものであるが、これらの否定要素が認められない場合であっても、直ちに管理監督者性が肯定されることになるものではないことに留意されたい。

              記

1 「職務内容、責任と権限」についての判断要素
店舗に所属する労働者に係る採用、解雇、人事考課及び労働時間の管理は、店舗における労務管理に関する重要な職務であることから、これらの「職務内容、責任と権限」については、次のように判断されるものであること。

(1) 採用
店舗に所属するアルバイト・パート等の採用(人選のみを行う場合も含む。)に関する責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。

(2) 解雇
店舗に所属するアルバイト・パート等の解雇に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。

(3) 人事考課
人事考課(昇給、昇格、賞与等を決定するため労働者の業務遂行能力、業務成績等を評価することをいう。以下同じ。)の制度がある企業において、その対象となっている部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。

(4) 労働時間の管理
店舗における勤務割表の作成又は所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。

2 「勤務態様」についての判断要素
管理監督者は「現実の勤務態様も、労働時間の規制になじまないような立場にある者」であることから、「勤務態様」については、遅刻、早退等に関する取扱い、労働時間に関する裁量及び部下の勤務態様との相違により、次のように判断されるものであること。

(1) 遅刻、早退等に関する取扱い
遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。

ただし、管理監督者であっても過重労働による健康障害防止や深夜業に対する割増賃金の支払の観点から労働時間の把握や管理が行われることから、これらの観点から労働時間の把握や管理を受けている場合については管理監督者性を否定する要素とはならない。

(2) 労働時間に関する裁量
営業時間中は店舗に常駐しなければならない、あるいはアルバイト・パート等の人員が不足する場合にそれらの者の業務に自ら従事しなければならないなどにより長時間労働を余儀なくされている場合のように、実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。

(3) 部下の勤務態様との相違
管理監督者としての職務も行うが、会社から配布されたマニュアルに従った業務に従事しているなど労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。

3 「賃金等の待遇」についての判断要素
管理監督者の判断に当たっては「一般労働者に比し優遇措置が講じられている」などの賃金等の待遇面に留意すべきものであるが、「賃金等の待遇」については、基本給、役職手当等の優遇措置、支払われた賃金の総額及び時間単価により、次のように判断されるものであること。

(1) 基本給、役職手当等の優遇措置
基本給、役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、割増賃金の規定が適用除外となることを考慮すると十分でなく、当該労働者の保護に欠けるおそれがあると認められるときは、管理監督者性を否定する補強要素となる。

(2) 支払われた賃金の総額
一年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の特別の事情がないにもかかわらず、他店舗を含めた当該企業の一般労働者の賃金総額と同程度以下である場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。

(3) 時間単価
実態として長時間労働を余儀なくされた結果、時間単価に換算した賃金額において、店舗に所属するアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。

特に、当該時間単価に換算した賃金額が最低賃金額に満たない場合は、管理監督者性を否定する極めて重要な要素となる。

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2008年9月 9日 (火)

労働基準法の「管理監督者」とは?(1)~通達より(1)

◆管理監督者に関する労働基準法の定義は

労働基準法では第41条に、労働時間の適用除外について定めています。

第41条 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

1.別表第一第6号(林業を除く)又は第7号に掲げる事業に従事する者
2.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3.監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けた
もの

この第2号が、管理監督者を指しているわけですね。

では、自社の管理職が、労働基準法の「管理監督者に」に該当するかどうかを、どう判断すればいいのでしょうか?

◆重要な2つの通達

これに関しては、次の2つの通達が重要です。

昭和63年3月14日、基発第150号
「監督又は管理の地位にある者の範囲」

平成20年_4月1日、基発第0401001号
「管理監督者の範囲の適正化について」

このブログで、これら2つの通達の内容と、会社としてこれをどう解釈していくべきかを見ていきます。

◆昭和63年3月14日、基発第150号「監督又は管理の地位にある者の範囲」

では、今回は、この通達を掲載します。

---
法第41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。具体的な判断にあたっては、下記の考え方によられたい。

         記

(1)原則
 法に規定する労働時間、休憩、休日等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合には、法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則であり、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であれば全てが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと。

(2)適用除外の趣旨
 これらの職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として法41条による適用の除外が認められる趣旨であること。従って、その範囲はその限りに、限定しなければならないものであること。

(3)実態に基づく判断
 一般に、企業においては、職務の内容と権限等に応じた地位(以下「職位」という。)
と経験、能力等に基づく格付(以下「資格」という。)とによって人事管理が行われている場合があるが、管理監督者の範囲を決めるにあたっては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること。

(4)待遇に対する留意
 管理監督者であるかの判定にあたっては、上記のほか、賃金等の待遇面についても無視しえないものであること。この場合、定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定起訴賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があること。なお、一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。

(5)スタッフ職の取扱い
 法制定当時には、あまり見られなかったいわゆるスタッフ職が、本社の企画、調査等の部門に多く配置されており、これらスタッフの企業内における処遇の程度によっては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられ、かつ、法が監督者のほかに、管理者も含めていることに着目して、一定の範囲の者については、同法41条第2号外該当者に含めて取り扱うことが妥当であると考えられること。

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2008年9月 4日 (木)

要注意!会社の決める「管理職」と法の「管理監督者」はイコールではない

「当社は課長以上を管理職としている。したがって、課長以上は残業手当の支払い対象にならない」

この説明、どう思われますか?
一見、正しく見えますね。
実際問題として、このように考えている会社は少なくないはずです。

しかし、ここには大きな落とし穴があります。


◆会社の管理職の定義は自由

自社の管理職をどう定義し、どう位置づけるかは、会社の自由です。

会社は、組織、業務実態、人員構成などに基づいて社員を配置し、マネジメントの任にあたる人を管理職に任命します。

これらは、会社が自らの戦略に基づき、その効果的な実行のために行うことであり、会社の人事権、経営権の範囲のことです。


◆法の定義は会社の定義とは別

しかし、労働基準法第41条に定める適用除外者(管理監督者)の定義は、個別企業の管理職の定義とは別物です。
もちろん、法の管理監督者の定義も、組織における管理職の機能や役割を踏まえています。

ただし、個々の企業の「管理職」が、法の「管理監督者」に該当するかどうかは、別問題なのです。

ここは会社としても十分な注意が必要です。
自社の「管理職」と、法の「管理監督者」の定義を、いま一度確認し・チェックしてみてはいかがでしょうか?


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2008年9月 3日 (水)

名ばかり管理職問題とは?

◆マクドナルド判決は波紋を呼びました

2008年1月28日、東京地方裁判所が出した判決は、大きな波紋を呼びました。いわゆる「マクドナルド店長訴訟」です。

この事件は、日本マクドナルドが店長を管理監督者と位置づけ、残業代を支払わないのは、権限や処遇の実態からみて違法であるとして、同社店長が未払い残業代の支払を求めていたものです。
判決は、職務・権限および勤務の実態と賃金などの処遇の2つの要素から、管理監督者にあたらないと判断、会社に総額約750万円の支払いを命じました。

判決は、次の3点を基準に、原告となった店長の「管理監督者性」を判定しています。

1)権限、経営者との一体性
2)労働時間の自己裁量性
3)待遇

◆判決で示された基準は目新しいものではない

実は、この判決で示された基準は、決して目新しいものではないのです。
これまでの裁判や通達などで、繰り返し示されてきたものを、改めて出したにすぎません。
ですから、この訴訟が起こされた時点で、原告の言っていることが事実であれば、会社にとっては厳しい判決が出ると予想できました。

◆判決は何を提起したか

ではなぜ、今回の判決が、これほどまでに注目されたのでしょうか?
それは、全国的に店舗展開しているという規模の面があると思われますが、それだけでなく、次のような要因が問題の背後にあるからです。

・長時間労働、メンタルヘルス
・管理職の役割、権限
・業務および働き方の急速な変化

今回の判決は、このような様々な課題を企業につきつけてきたと言えます。

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