2009年12月15日 (火)

退職願は受理された?

部下が退職願を提出してきた。貴重な戦力なので、辞めてほしくなかったのだが、本人の意思が固いので、退職願を受理した。
ところが翌日、本人が、「考え直した。退職は撤回したい」と申し出てきた。
もう退職願は受理してしまったし、今更撤回など、認めるわけにはいかないと思っているのだが。

本人が退職を願い出て、会社が承認した上での退職を、「合意退職」といいます。
「円満退職」という言い方をしている会社もあります。

双方合意の上で、労働契約を終了させるということですね。

合意退職の場合は会社の承認、辞職の場合は辞表を会社が受理した時点で、労働契約解約の効力が発生します。

では、この承認あるいは受理とは、どの時点のどのような行為を指すのでしょうか?
ここがはっきりしていないと、意外なトラブルに発展します。
会社は受理したつもりでも、実はそうとは言えないということがあり得るからです。

これに関して、人事部長が退職承認の決裁権をもつ場合、人事部長が退職願を受理した時点で、使用者による退職承諾の意思表示がされ、合意退職の成立が認められるが、決裁権のない常務が退職願を受理しても、撤回が認められるとした判例があります。(岡山電気軌道事件・平成3年・岡山地裁)

また、退職願を受理したということが、本人に伝わっていないといけません。
ここも意外と見落としがちで、決裁権者が決済をした時点で手続きが終わったつもりになっていると、後で本人から、「何も聞いていない」というクレームがついてしまいます。
もしその時点で、本人が退職願を撤回すると申し出た場合、それを会社は拒むことはできません。

このように、退職に関する手続きが適当だと、思わぬトラブルが起こりかねません。
何より、退職願を出すという行為は、本人にとって相当な決心のはずです。
(常識的な人であれば)。
会社は、そのこともよく考えて対応する必要があります。

以上から、退職に関しては、誰が退職承認の決裁権をもつか、承認の意思表示はどのように行うかを定めておく必要いがあるのです。

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2009年11月 9日 (月)

労務トラブル110番~ライバル会社への転職、従業員引き抜き

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◆従業員の引き抜き行為は違法か?

在職中あるいは退職した従業員が、在職中の従業員を引き抜き、自分が設立した会社あるいは転職した会社に入社させるということがあります。

会社としては、このようなことはしてもらいたくありませんね。
しかし、これは、「職業選択の自由」と絡む問題であり、無制限な制約はできません。

在職中の従業員が独立を考えて他の従業員の引抜を図るようなケースや、ある企業が他社の従業員を引き抜くという行為が、違法かどうかは、次のような要素が判断基準になります。

・転職する従業員の地位、待遇
・転職する人数
・転職が会社に及ぼす影響
・転職の勧誘方法

そして、社会的相当性を逸脱した悪質な方法で行われた場合は違法となります。

一方、引き抜き行為が単なる転職の勧誘にとどまっている場合は、違法とはいえません。

退職者による従業員の引き抜き行為も同様に考えていいだろう。
ただしこれも、前述の競業避止義務同様、職業選択の自由と絡む問題であり、無制限な制約はできない。

◆ライバル会社に転職した従業員への退職金減額・不支給は可能?

退職金を不支給としたり、減額する場合は、その点に関する就業規則上の根拠が必要です。

では、就業規則に、「競業避止義務違反の場合は退職金を減額または不支給とする」と定めることは可能でしょうか?

この点について、同業他社に転職した場合は自己都合退職金を半額にすると定めた退職金規則の有効性が争われた裁判で、次のような判決が出されています。

「退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することをもって直ちに社員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められず、したがって、被上告会社がその退職金規則において、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給すべき退職金につき、その点を考慮して、支給額を一般の自己都合退職による退職の場合の半額と定めることも、本件退職金が功労報償的な性格を併せ有することにかんがみれば、合理性のない措置とすることはできない。」(三晃社事件・最高裁・昭和52年)

つまり、合理性があれば、退職金の減額措置や不支給も許されるということです。

◆ライバル会社への一斉転職は背信とした判決が出ました

有線最大手USENの関連会社に一斉転職した競合社キャンシステムの元従業員約300人が、会社側に退職金を求めた訴訟の判決で、東京地裁は10月28日、一部を除いて請求を棄却しました。

同事件は、キャン社を退職した元役員がUSEN関連会社は2003年7月に設立、直後にキャン社従業員の約3分の1に当たる約500人が移ったというもの。

裁判長は「全国規模で一斉退職すれば、会社の業務が完全にまひ、停止すると認識しながら、あえて示し合わせて退職届を出しており、会社への著しい背信的行為だ」と指摘。従業員らを懲戒解雇としたキャン社の処分は有効として、退職金を支払う必要はないとしました。

ただし、退職者のうち、25人については「大半の原告が一斉退職した後の退職で、会社が大混乱に陥る中、今のうちに少しでも待遇の良い会社へ移ろうと考えて退職しても責めることはできない」として、計約1,800万円の退職金を支払うよう命じました。

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2009年9月 8日 (火)

労務トラブル110番~従業員からの退職申し出期日は強制できる?

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当社は就業規則で、「退職の申し出は退職日の30日以上前とする」と定めている。
ところがある従業員が、20日後を退職日とする退職願を出してきた。
就業規則の規定を理由に、そのような申し出は認められないと言ったが、本人の意思は固い。
どう対処すべきか。
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退職は、次のような形で労働契約を終了させることをいいます。

・合意退職:使用者と労働者が合意の上で労働契約を終了させる
・辞職:労働者が一方的に労働契約を終了させる
・当然退職:定年などあらかじめ決められた条件を満たしたために労働契約が終了する

辞職も合意退職も、従業員の意思による「自発的退職」であることに変わりはありません。

そして、解雇については法令や判例でさまざまな制約が課せられているのに対し、自発的退職についての労働法上の制約はありません。

したがって、期間の定めのない雇用契約では、いつでも解約の申し入れをすることができ、2週間が経過すれば雇用契約は終了すると定めた民法627条が適用されます。
したがって、自発的退職の意思表示は、退職日の2週間前までにすれは有効なのです。

しかし、従業員が退職となると、後任者の決定、業務引継ぎ、得意先など外部への挨拶回りなど、様々な業務が発生します。
これらを漏れなく、スムースに行うためには、それなりに時間がかります。
2週間程度では済まないことも珍しくありません。

そのため、会社としては、従業員からの自発的退職については、30日以上前など、申し出期日を指定したいところでしょう。

このような規定それ自体は、問題ありません。

しかし、それを絶対的なものとして強制することはできないのです。

以上から、次のように対処するのが現実的でしょう。

・就業規則上は、従業員から労働契約解約の申し入れをする場合の申し出期日と会社の承認を要する旨を定めておく。
・従業員の退職申し出が上記期日を切っている場合は、退職日を期日通りにするよう話し合うが、従業員の意思が固い場合はそれを認める。
・ただし、2週間以上の期間は義務づける。

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2009年8月31日 (月)

労務トラブル110番~パートタイマーを正社員に転換した場合の年次有給休暇は?

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当社では、パートタイマーを正社員に登用する制度を導入している。
先般、この制度に基づいて、所定の選考をパスした、勤続3年のパートタイマーを、正社員に登用することにした。

正社員に登用した場合、年次有給休暇は、正社員登用日でリセットして与えている。
ただし、パートタイマー時代に付与された年次有給休暇は、そのまま使える。

したがって、この人の場合は、次のようになる。

正社員登用時(勤続3年):パートタイマー時代の年次有給休暇6日(比例付与)
正社員登用後6ヶ月:10日付与

このような説明をしたところ、本人から、「パートタイマー時代からの勤続を通算すべきではないか」と言われた。

しかし、パートタイマーのときは、勤務時間や勤務日数が正社員より短いし、正社員転換時でリセットしても、この人の場合は日数が増えるのだから、問題ないと思うのだが…
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◆パートタイマーの正社員への転換措置

パートタイマーの正社員への転換措置は、2008年4月施行の改正パートタイム労働法で、会社に義務付けられました。

すあわち、会社は、次のいずれかの措置をそらなくてはならないとされています。

①正社員募集を行う場合、募集要項を、会社に勤務しているパートタイマーに周知する。
②正社員の配置を新たに行う際、パートタイマーに、その業務への配置希望を言う機会を与える。
③正社員登用制度を設ける。
④教育訓練を受ける機会を確保するための援助を行う等、正社員への転換を推進するための措置を講ずる

◆正社員に登用した人の勤続年数はどう考えるか?

正社員登用制度を設ける場合、登用基準、登用手続きなどを考えなくてはなりませんが、それと並んで大切なのが、「登用した人の処遇をどうするか」という点です。

そのひとつが、勤続年数の扱い。

人事処遇上、勤続年数は、いろいろな用途で使われますね。

その代表的なものが、退職金と年次有給休暇です。

このうち、退職金の扱いをどうするかは、会社の自由です。
退職金をどのような基準で支払うか(さらに言えば、退職金を支払うかどうか自体)は会社の自由ですから、正社員登用者の勤続年数をどうカウントするかも、会社の自由となります。

ただし、退職金制度を設けた以上は、就業規則などに定めなくてはなりませんし、定めたら、会社もそれに拘束されます。

一方、年次有給休暇については、会社の自由というわけにはいきません。
なぜなら、年次有給休暇は、労働基準法で保障された労働者の権利であり、その与え方などについても、法による規制があるためです。

では、パートタイマーから正社員に登用された場合は、どのような扱いになるのでしょうか?

①パートタイマー時代から通算する
②正社員登用時点からカウントする

正解は「①パートタイマー時代から通算する」です。

では、日数はどうなるのでしょうか?

パートタイマーなど、所定労働時間、所定就業日数が少ない人の場合、その労働時間・就業日数に応じて、フルタイムの人より年次有給休暇の日数を少なくできます。
これを「比例付与」といいます。

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※クリックして拡大表示してください

この扱いを受けていた人が、正社員、つまりフルタイムに転換した場合の年次有給休暇は、次のようになります。

①有給休暇付与日より前に正社員に登用されても、付与日までの休暇日数はそのまま
②付与日に発生する休暇日数は次の通り
・出勤率は付与日前1年間(または6ヶ月間)の所定労働日数に基づいて算定する
・年休付与日数は付与日の所定労働日数に対応する

設問のケースの場合は、次のようになります。

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※クリックして拡大表示してください

<参考>

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2009年8月 7日 (金)

労務トラブル110番~裁量労働制でも休日出勤手当は必要?

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当社は労使協定をむすんで、専門業務型裁量労働制を導入した。
残業時間は1日1時間30分みなしである。

裁量労働制適用対象者については、労働時間の管理は行っていない。

ある日、裁量労働制適用対象者から、「自分は先週の日曜日に出勤した。この分については、みなし残業手当とは別に支払っていただけますよね?」と聞かれた。

しかし、裁量労働制適用対象者については、業務をいつ、どのように行うかは本人にまかせている。
本人の裁量で休日に出勤したのに対して、みなし残業手当とは別に休日出勤手当支払わなくてはならないのか?

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裁量労働制は、柔軟な働き方を実現する制度として、利用価値があります。
しかし、労働時間管理との関係で、誤解も多く、トラブルになることもあります。

専門業務型裁量労働制の場合、このケースのように「労働時間の管理は行っていない」こと自体は問題ありません。
そもそも裁量労働制とは、労働時間の厳密な把握をすることがなじまない業務が対象ですから、当然です。

しかし、その一方で、専門業務型裁量労働制を導入する場合、労使協定で、次の事項を定めなくてはならないことになっています。

・対象労働者の勤務状況を把握する方法
・把握した対象労働者の勤務状況に応じた、「健康・福祉確保措置」

つまり、裁量労働制適用対象者といえども、出退勤時刻の把握などの措置は必要なのです。

さて、次に、裁量労働制適用対象者の休日出勤をどう考えるかです。

ここで、ポイントになるのが、「裁量労働制といえども休日の規定は適用される」という点です。

この点が、管理監督者と異なる点です。

したがって、裁量労働制適用対象者が休日出勤をした場合は、休日出勤の割増賃金(35%)を支払わなければなりません。

裁量労働制で、「みなす」ことができるのは、平日の労働時間なのです。
(労使協定も、そのようになっています。休日については協定しません)

この点は、深夜労働についても同様で、もし裁量労働制適用対象者が深夜勤務をした場合は、深夜労働の割増賃金(25%)を支払わなければならないのです。

そうなると、もし裁量労働制適用対象者が、自由に休日出勤や深夜労働をされては、会社は困ります。

したがって、裁量労働制であっても、休日出勤や深夜労働については、事前許可制とするなど、何らかの管理が必要です。

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2009年7月30日 (木)

年次有給休暇付与の基準となる「出勤率」とは?

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当社では年次有給休暇を付与する際の出勤率の算定で、育児休業・介護休業や業務災害による休みについては、出勤としているが、病気欠勤の場合は、他の欠勤(自己都合欠勤、無断欠勤)同様に、出勤にはしていない。

病気欠勤が多く、出勤率が8割にならなかったため、年休を付与されなかった社員から、「欠勤といっても、病気でやむなく休んだのだから、出勤率で不利に扱うのはおかしい。もし分子(出勤日)に入れないのなら、せめて分母(全労働日)にも入れないで出勤率を計算すべきだ」という苦情が出た。
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◆年次有給休暇はどういう場合に付与されるか

年次有給休暇は、6ヶ月以上継続勤務し、その期間の出勤率が8割以上の人に対し10日間付与されます。
6ヶ月経過後は、1年ごとに、その期間の出勤率が8割以上の場合に付与されます。

◆出勤率はどう計算するか

出勤率は、(就労した日数)÷(労働日(就業日))で計算します。

分母になる労働日とは所定労働日数のことで、その期間(6ヶ月または1年)の暦日数から、所定休日を除いて算定します。

したがって、出勤率は、現実に出勤した日を、会社の所定労働日数で割ればいいのですが、いくつか考慮しなくてはならないことがあります。

前述のとおり、休日は労働日ではないので、分母には入れません。

また、休日出勤をしても、分子、つまり就労日数には入れません。
休日出勤日は、労働日ではないので、休日出勤をしても、分母・分子ともに入れないのです。

また、労働基準法および通達により、年次有給休暇、育児・介護休業、産前産後休業、業務災害による休業日は、出勤したものとみなさなくてはなりません。
したがって、これらの日は、全労働日、出勤日、つまり、分母・分子両方に入れなくてはなりません。

では、欠勤の場合はどうなるでしょうか?

欠勤日は、本来、「労働義務のある日」です。
休日とは異なりますので、この日は全労働日、すなわち分母に入れなくてはなりません。

また、欠勤ということは、当然、「不就労日」ということになりますから、出勤日、すなわち分子には入れません。

この点は、欠勤の種類が何であっても同じです。

ただ、不就労であっても、欠勤の種類によって、罰則があるかどうかが異なるわけです。
この点は、就業規則に定めます。

無断欠勤の場合は、処罰の対象にするのが、一般的です。

「病気でやむなく欠勤になったのだ」というご本人の主張が、あながち不当だとまでは言えません。
しかし、だからといって、出勤扱いにしなくてはならないということにはならないのです。

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2009年7月16日 (木)

労基署への駆け込みが急増

労働基準監督署に、労働相談に訪れる労働者が急増しています。

業績悪化で、労務トラブルが増えていることの表れですね。

7月16日の日経新聞によると、全国の労働相談件数は2008年度、約108万件で、前年度比8%増となっています。

労働基準監督署の方は、寄せられる相談処理で手一杯、日常業務に手が回らない悪循環に陥りかねないとか。

◆法違反の疑いがある場合は

相談内容から、労基法違反などの疑いが出れば、労働基準監督官が「臨検監督」に入ります。

会社はこれを拒むことはできません。
労働基準監督官には、労基法により、事業場などを臨検し、帳簿・書類の提出を求め、使用者・労働者に尋問する権限が与えられています。
また、特別司法警察職員としての権限をもっており、捜査令状を取れば、強制捜査、事情聴取、証拠物の押収ができます。

強大な権限をもっているわけです。

◆労働基準監督署の臨検監督とは

臨検には、次の4種類があります。

1)定期監督
2)災害調査・災害時監督
3)申告監督
4)再監督

定期監督とは、その名の通り、定期的に行う調査。
労働政策の重点事項に則り、ランダムに企業を訪問し、調査します。

「申告監督」とは、会社内外の人が、「法違反を犯しているので、調査・指導してほしい」と「申告」した場合に行います。
いわゆる「内部告発」などの場合も、これに該当します。
労働基準監督署は、どの会社(事業場)かが分かれば、申告者が匿名でも対応します。

また、監督署が臨検調査に来る場合、「定期監督です」とか「申告監督です」などとは言いません。
申告者が不利益を被らないよう、定期監督を装ってくることもあります。
(なお使用者は、申告をしたことを理由として労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをすることは禁じられています)。

私もこれまで何度か、臨検監督に立ち会ったことがあります。
賃金台帳、タイムカードなどの帳簿を調査し、事業所を見分します。
さまざまな角度から質問が飛んでくるので、気を抜けません。

臨検監督が終わると、調査結果によって、次のような措置が取られます。

1)是正勧告書の交付
2)指導票の交付
3)施設設備等の使用停止命令書の交付

是正勧告書、指導票が出されたら、会社は是正期日までに是正措置を取り、労働基準監督署に「是正報告書」を出さなくてはなりません。

労基署の最後の手段は、「送検」です。
書類送検が多いのですが、事業主が行方をくらます恐れがあるような場合は、身柄を送検されることもあります。

送検になるのは、次のような場合です。

・労働災害で死傷者が出て、その原因が法令違反であった。
・重大な法令違反、悪質は違反であった。
・是正勧告に従わなかった、改善が見られなかった。

労働基準監督署の臨検監督は、いつ来るか、まったく分かりません。
あらゆる事業所が、対象になり得ます。

そのときになって、あわてることのないよう、法令対応、リスク対応は日ごろからしっかりとっておくようにしましょう。

もし、不安を感じるのであれば、一度専門家にご相談することをお勧めします。

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2009年7月 7日 (火)

経歴詐称して入社したことを判明した場合は?(2)

◆セミナー「中堅・中小企業のための就業規則作成・見直し講座」
7月13日(月)13:30~16:00開催

◆犯罪歴は申告しなくてはならないか?

刑事事件で刑事事件で公判中だった事実を秘匿していたことについて、「申告すべき義務があったとはいえない」とした裁判例があります。

ただしこれは、公判中という事例。

有罪判決が確定していた場合はどうなるのでしょうか?
「必ずしも申告しなくてよい」という見解もあります。
しかしその一方で、確定した有罪判決は、「賞罰」の「罰」に該当し、申告すべきであるという見解もあります。
判例も、この立場に立っています。

◆前職での処分歴は

では、前職で懲戒処分を受けたという事実があった場合、応募者は、これを正直に申告しなくてはならないのでしょうか?

この点については、申告の義務はないというのが定説です。
つまり、このような経歴を申告していなくても、それだけをもって経歴詐称として処分することはできません。

会社にしてみると、悩ましいことですね。
懲戒の内容にもよりますが。

もしこれが、横領など、重大な行為だった場合、「もう大丈夫か?」と考えざるを得ないでしょう。

しかし、刑事罰に処せられていなければ、この事実を秘匿していたことをもって、解雇などの処分にすることはできません。

もしこのような事実が発覚した場合、本人に、会社がその事実を知っていることを伝え、本人に事情聴取をすることが現実的な対応でしょう。

そのうえで、一定期間は「観察期間」として、本人の業務をしっかり管理するという措置を取るのが良いと考えます。

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2009年7月 6日 (月)

経歴詐称して入社したことを判明した場合は?(1)

◆セミナー「中堅・中小企業のための就業規則作成・見直し講座」
7月13日(月)13:30~16:00開催

◆経歴詐称とは

7月6日の日経新聞「リーガル3分間ゼミ」、今回のテーマは「採用後に最終学歴詐称が発覚、解雇は妥当か?」というものでした。

記事は大学中退の経歴を高卒と偽っていた事実が入社後に判明、解雇処分に該当すると人事から言われたという事例です。

記事は、「学歴を高く詐称するか低く詐称するかに関係なく、虚偽の学歴を申告する行為自体が問題。最終学歴の詐称は重要な経歴詐称とみなされ、解雇処分となる可能性が高い」とする弁護士の見解を紹介しています。

過去の判例も、「雇用関係は, 労働力の給付を中核としながらも, 労働者と使用者との相互の信頼関係に基礎を置く継続的な契約関係であるということができるから, 使用者が, 雇用契約の締結に先立ち, 雇用しようとする労働者に対し, その労働力評価に直接関わる事項ばかりでなく, 当該企業あるいは職場への適応性, 貢献意欲, 企業の信用の保持等企業秩序の維持に関係する事項についても必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合には, 労働者は, 信義則上, 真実を告知すべき義務を負うというべきである」と、経歴詐称には厳しい態度をとっています。

つまり、経歴を詐称すること自体、労使の信頼関係を損なう行為であり、そのこと自体が制裁の対象となるということです。

経歴詐称で問題となるのは特に、採用の決定に重要な決定を与える事実を秘匿したり、偽ったりした場合です。

その点で、学歴や職歴を詐称することは、経歴詐称として解雇などの処分の対象になる可能性が高いと考えていいでしょう。

◆犯罪歴、処罰歴は?

問題となることが多いのは、学歴や職歴といった、能力評価などに影響を及ぼすと考えて問題ない経歴を秘匿していた場合です。

これは、その経歴が採否決定に有する意義や重要性だけでなく、「そもそも申告する必要があるのか?」という問題もあります。

上記記事は、刑事事件で公判中だった事実を秘匿していたことについて、「申告すべき義務があったとはいえない」とした裁判例を紹介、「犯罪歴は能力や適性と無関係。必ずしも申告しなくてもよい」という弁護士の見解を紹介しています。

ただ上記は、公判中という事例です。
有罪判決が確定していた場合はどいうなるでしょうか?

また、犯罪ではなく、前職での処分歴などはどうでしょうか?

次回、この問題を見ていきましょう。

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2009年6月11日 (木)

賞与は支給日に在籍していないともらえない?

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「当社は賞与の支給要件を、次の2つとしている。

①算定対象期間の全期間在籍
②支給日当日在籍

ところが、算定対象期間は全部在籍していたが、支給日前に退職することとなり、賞与が支給されない(②の要件を満たさない)社員から、「算定対象期間のすべてに在籍した時点で、賞与の権利が確定している。しかも賞与は、賃金の後払い的性格が強い。したがって、支給日にいないからといって賞与を支給しないのは不当である」とクレームがついた。

賞与には過去の労働に対する対価という、「賃金の後払い的性格」があります。

しかし、それだけではなく、将来への期待という性格も併せもちます。
したがって、支給日在籍を賞与支給の要件とすることは、問題ないとされています。

判例にも、任意退職者は退職時期を任意に選択でき、定年退職者のように退職日を任意に選択できない者については日割り計算によって賞与を支給するなど、労働者に有利な面があるため、合理的としたものがあります。

賞与の支給日在籍要件は、問題ないと考えていいでしょう。

ただし、定年退職者や被解雇者のように、退職日を選択できないような場合は、支給日在籍要件は無効と解すべきという見解もあります。

実際、定年退職者や会社都合退職者には、支給日在籍でなくても賞与支給対象とする会社は少なくありません。

こうした点も考慮に入れるべきでしょうね。

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